勝手な恋
1位 羽多野 秋
羽多野先輩…また、1位なんだ…。
私はこの先輩を知らない。
知ってるのは、剛と同じで毎回1位を取っていること。
すごいなぁ。
いつもついつい確認しちゃう。
顔も知らない先輩だけど、ちゃんと1位取れたのかなって。
私の気もよそに毎回きちんと1番な先輩は、どんな人なのかな。
いつしか、とても気になっていた。
一度でいいから会ってみたいなぁ。
そう思うようになっていた。
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「へっ?羽多野先輩?」
今日は火曜日。
恒例の、放課後勉強with剛@図書館の日。
剛は人気があるから…
友達も多くて、
スポーツもできて、
頭も学年1で、
おまけも顔もいい(らしい)
私なんかと、2人で勉強してるってみんな知ったら怒るかな?
そんなことを考えながら答える。
「うん、また1位みたいだよねぇ。
どんな 人なのか気になるなー。」
「恋春ちゃん、3年生相手には勝負は出来ませんよ?」
剛がお前頭大丈夫?みたいな顔で見てくる。
「ちがうもん。ただ…気になるだけだもん。」
ぷくっと頬っぺたを膨らませてみせた。
そんなバカにしなくても。
「…まさか、恋しちゃった?」
逸らした顔を覗き込むように剛が言った。
「へ…?なんでそうなるの?そもそも私会ったことないよ。」
そう答えると、ふぅっと大きく吐いて剛が言った。
「あっせるじゃん!めったに男の話なんなしない恋春が、気になるとか言うから!」
もう怒るぞぷんぷんっ!
なんてわけわからないこと言ってる剛を笑いながら、次は英語でもやろうかなと、ふとカバンをみると、そこにあるはずの教科書がなかった。
「あっ。私教科書忘れちゃったみたい!すぐとってくる!」
「俺も行こうか?」
なんて剛の言葉も聞かず、パタパタと走って取りに行った。
今日の勉強は苦手な英語がメインなのにっ。
「あっあった!」
そうだ、今日は英語がなかったから
ロッカーにしまいっぱなしだったんだ。
両手に抱え込むように教科書を持ち、来た道を戻る。
「では、次羽多野。」
教室から聞こえてきたこの言葉にピクッと体が反応した。
そういえば、3年生の進学クラスは放課後に補講があるんだっけ。
教室前方の扉が少しだけあいている。
私は、覗いて見ずにはいられなかった。