勝手な恋



翠ちゃんが、しゅっぱっぱっと携帯を駆使して先輩に連絡してくれたおかげで、昼休み羽多野先輩に会いに行くことになった。



「うわぁ…うわぁ…」



「緊張しすぎ!私の従兄弟だって!」


ケラケラ笑う翠ちゃんについて行くと、中庭のベンチで読書をする男の人が見える。


うっわぁ…。


羽多野先輩だ。



わかる。間違いない。



今日まで一回も面と向かうことはなかったけど、


廊下で、校庭で、色んなところで目で追いかけた姿。



「よっ!はーさん!」



立ち上がって振り向いたのは、まぎれもなくあの羽多野先輩だった。



「ほら、この子、さっき言ってたはーさんに憧れてる恋春!私の親友だよ!」



翠ちゃんは、隠れていた私を無理やり引っ張って先輩の元へ押した。



「そうなんだ…。はじめまして、はーさんです」



羽多野先輩が笑った。


私を見て笑った。


よく見ると目も少し茶色い。


ハーフさんなのかな?



「ことき?」


色々考えすぎて、ぼーっとしてた。


翠ちゃんに呼ばれて慌てた私は、



「はっはじめまちて!」



始めての会話でものすごく恥ずかしく噛んでしまった。



「くっ…ははははは。そこで噛む人始めて見たよ」


うわっ!


すごくはずかしい!


羽多野先輩に笑われちゃった!



「あはははっ!はーさん、この子おもしろいだろ!超いい子なんだぞ!」


翠ちゃんが爆笑しながら、私の肩をばしばし叩く。


「はははっ。で、なにちゃんだっけ?」


「あっあたしー…」


「三谷恋春ちゃん、でしょ!」




…。


えっ…!



「ごめんね、知ってた。ずっと二番の子だよね?」



羽多野先輩が私に向かって微笑みかける。



先輩、私のこと知ってた?


"ずっと2番"って定期考査のこと?




私が先輩の事知ってたのと同じ理由で



先輩も知ってた…?




「っ////」



さっきまでバクバク言ってた心臓が



もっと大きく鼓動し始めた。



全身も、あつい。



私…、私。


もう少し、



もう少しだけでいいから、




先輩のこと好きでいいですか?





「先輩あのっ…」



「先輩て。はーさんははーさんだよな?」


翠ちゃんがくくっと笑って言う。



「うん、はーさんです」



ドキっ



「はっはーさん!私に英語を教えてください!」




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