ぶきっちょ
彼女はゆっくりと立ち上がって、ぐるっと辺りを見渡す。
『吉村くんこそ、こんな時間にどうしたの?もう下校時間だよ』
あたしもまだ残ってるけどね、そう彼女は笑いながら言った。
『タオル忘れてさ』
そう言って俺は隅にある青い塊を指差した。
そっか、そう彼女は呟いてまた一瞬俯いた。
『・・・何かあったの?』
いつも明るくて、皆の輪の中心にいるような彼女に似つかわしくない雰囲気に、俺は思わず問いかけた。
彼女は驚いたような表情で俺を見つめる。
『俺でよければ話くらい聞きますよ』
できるだけいつものような、軽い感じの俺の雰囲気を作って言う。
『もちろん、無理には聞かないけどさ』