ぶきっちょ
「男の子ってさ、そうゆう話しないの?」
千夏ちゃんが不思議そうに尋ねる。
「一般的にはどうなんだろうな。俺たちは特にしないかな」
俺はそう、できるだけ穏やかに言った。
「へぇ、そうなんだ」
彼女はそう言うと、いつものように学校の話やテレビの話をし始めた。
俺はぼんやりとそれを聞きながら、一緒になって笑った。
「ちゃんと聞いてる?悠斗」
いつからか、千夏ちゃんは俺のことを『悠斗』と呼ぶようになっていた。
何だか距離が縮まったような感じがしたっけ。
千夏ちゃんは本当にいい子で、何より俺をとても想っていてくれた。
このまま順調に進めば、きっと本当に好きになれる。
そう思わせてくれるほど。
「ちゃんと聞いてるよ」
俺はそう言って彼女の頭を撫でた。
「じゃぁどうする?」
彼女は少し俺を試すような表情で聞いてくる。
「たまにはどっか遠くに行ってみるか?」
俺がそう言うと、千夏ちゃんは満面の笑み。
「すてきな1ヶ月記念にしようね」
今週末で1ヶ月。
―二ヶ月だけあたしと付き合って。
千夏ちゃんとの最初の約束だった。