ぶきっちょ
「知り合い?」
話し掛けられて、はっと我に返る。
いつのまにか俺の隣には千夏ちゃんがいて。
俺はとっさに下田さんから目を反らした。
「うん。塾が一緒だったんだ」
嘘は言っていない。
「そっか。元カノとかかと思った」
千夏ちゃんが、どこか寂しそうに笑いながら言う。
図星を突かれ、一瞬躊躇う俺に千夏ちゃんは言う。
「あ…ごめん」
千夏ちゃんは俺の表情から汲み取ったようだった。
「ううん、行こうか」
そう言って彼女の手を取って歩き出す。
その手をぎゅっと握り返した千夏ちゃんは、小さく呟いた。
「嫌いにならないでね?」