ぶきっちょ
「嫌いになんかならないよ」
俺はそう言って繋いでいた手に力を込めた。
そんなこと位で嫌いになる程、器は小さくないつもり。
だけど俺は、不安だった。
嫌いにはなれないけど、俺は千夏ちゃんを好きになれる日が来るのだろうか。
ううん、違う。
俺はこれから先、浜口さんを忘れられるのか?
彼女のはきはきした声も。
彼女のくるくる変わる表情も。
彼女の綺麗に整った顔も。
すらっとした体型も。
彼女との出会いも。
中学時代の色んな出来事も。
…あの日の放課後の告白も。
こんなにはっきりと思い出せるのに。
何気ない毎日の中で、ふと思い出してしまうのに。