ぶきっちょ
「やっぱりダメかな?」
公園の隅にあるベンチに向かっている時。
ずっと黙っていた千夏ちゃんが口を開いた。
足を止めて振り返ると、目に涙をいっぱい溜めている。
いつから堪えていたのだろうか。
もう溢れそうな位いっぱい。
「あたしじゃダメ?」
そう言って、彼女の頬を涙がつたう。
条件反射で、涙を拭おうとした俺。
だけでその手は、千夏ちゃんによって振り払われる。
「同情なら、いらない」
泣いていて涙がいっぱいの目なのに、何故か意思のはっきりした目。
「ごめん」
そう言って、俺は手を引っ込める。
「元カノさんが忘れられない?」
千夏ちゃんが涙を拭いながら尋ねる。
俺は小さく首を振る。
たぶん彼女は、この前遭遇した下田さんのことを言っている。
あの時も、すごく不安そうだった。
「じゃあ何で?」