ぶきっちょ
「俺さ、初恋が中学の時なんだ」
俺はゆっくり言葉を発した。
真剣な千夏ちゃんには、真剣に返したかったから。
「遅いだろ?それまではずっと、恋愛なんて興味なかったからさ」
俺が話す一語一句を、千夏ちゃんは聞き漏らさないないように真剣に耳を傾けていた。
「そんなとき、彼女に会った。一目惚れだった」
あの日のことは、今でもはっきり覚えてる。
あの日のことだけじゃない。
浜口さんとのことは、どんな些細なことでも覚えてる。
「見てるだけで満足だった。けど話したらもっと好きになった」
千夏ちゃんの目からまた、涙が溢れ始める。
「叶わないって分かってて、前になんか進めなかった」
いつもくよくよしてるだけだった。
「高校に入って、忘れるつもりだった」
もう会えないと思っていたし。
「だから千夏ちゃんと付き合った」