ぶきっちょ



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「もう髪のばさないの?」


携帯を返すあたしに、山下くんが聞く。


「う〜ん、たぶん」


そう答えるあたしのパーマのかかった髪に軽く触れ、山下くんが言う。


「冬休み明けだったよね?急に短くしたの」


「うん…?」


「俺は長いのが好きだから(笑)」


ふざけるように山下くんが言ったとき。


丁度バスが来て、あたし達は乗り込んだ。


窓際に座って外を見ると、もう暗くなり始めて、ガラスに映って見える。


背中辺りまであったストレートの髪を切ったのは、あの冬。


吉村くんの『ありえねぇ』を聞いた冬だった。


あのとき、気持ちも一緒にさよならしたつもりだったのに。














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