ぶきっちょ
「千夏ちゃんなら好きになれるって思えた」
俺がそう言うと、それまで黙っていた千夏ちゃんがすがるように言う。
「じゃあ……!!」
けど俺は、静かに首を振った。
「けど千夏ちゃんと付き合ったことで、彼女に再会してしまったから」
彼女を忘れようと、前に進もうとしたつもりだった俺。
けどその結果が皮肉にも、彼女と俺をまた引き合わせた。
「……え?」
千夏ちゃんの顔色が、みるみる悪くなる。
誰のことを言っているのか、解ってしまったようだ。
「けど彼女は、俺の親友と付き合い始めるし」
千夏ちゃんの瞳から、さっき以上の勢いで涙が溢れ出す。
首を振って、耳を塞いで、口を小さく開いた。
「聞きたくない」
ずきん、とまた胸が痛んだ。
けど、もう後戻りはできない。