ぶきっちょ
一瞬。
何が起こったのか分からなかった。
何故か俺達の間に浜口さんが現れた。
泣き崩れている千夏ちゃんに合わせてしゃがみこむ。
俺なんかには目を合わさずに、彼女は千夏ちゃんに紙袋を渡した。
そしてゆっくり立ち上がる。
――バチン
頬に走る痛み。
気付いたときには、思いっきり平手うちをされていて。
浜口さんが、真っ直ぐに俺を見てくる。
「勝手なことばっかり言わないで」
叩かれた頬が、じんじんする気がする。
「そんなデタラメ言って、千夏を傷付けるような人だとは思わなかった」
けどそれよりも、彼女に言われる言葉が胸に刺さって痛い。
浜口さんはまた俺を見なくなって、千夏ちゃんに合わせて少し屈む。
「千夏?吉村くんのいうことなんてデタラメだから。ちゃんと話してみて?」
千夏ちゃんの頭を優しく撫でる。
「二ヶ月おめでとうね」
それだけ言って立ち上がる。
そして俺の方は振り向かずに、また来た方向へと歩き出した。