ぶきっちょ
「嘘なんかじゃねぇよ!!」
彼女が立ち去る前に、どうしても分かって欲しくて。
必死に彼女の腕を掴む。
「信じられるわけないじゃん」
そう、彼女は言い放つ。
振り返ったりしないで。
全身の力が、ふっと抜ける気がした。
彼女はその隙を狙って手をふりほどく。
「だって、吉村くんはあたしを振ったんだよ?」
彼女が続けて言った。
俺が彼女を振ってしまったのは、変えられない事実。
やっぱり、もう一度頑張ろうなんて都合が良すぎるだろうか。
俺が呆然としている間に、彼女は走って出口に向かった。
立ち止まることも、振り返ることもなく。