ぶきっちょ



「嘘なんかじゃねぇよ!!」


彼女が立ち去る前に、どうしても分かって欲しくて。


必死に彼女の腕を掴む。


「信じられるわけないじゃん」


そう、彼女は言い放つ。


振り返ったりしないで。


全身の力が、ふっと抜ける気がした。


彼女はその隙を狙って手をふりほどく。


「だって、吉村くんはあたしを振ったんだよ?」


彼女が続けて言った。


俺が彼女を振ってしまったのは、変えられない事実。


やっぱり、もう一度頑張ろうなんて都合が良すぎるだろうか。


俺が呆然としている間に、彼女は走って出口に向かった。


立ち止まることも、振り返ることもなく。
















< 124 / 213 >

この作品をシェア

pagetop