ぶきっちょ
もう辺りは真っ暗な中、一人空き地の塀の壁に寄りかかる。
ここに居れば会えるなんて保証はないのに、もう一時間も待ってる俺。
そろそろ諦めて帰ろうと、一息ついたときだった。
暗闇の中、やや早足で歩く彼女の姿を見つけた。
すぐに声を掛けようとして、一瞬躊躇う。
友貴と別れて、とにかく会いたいと思った。
足が勝手にここに向かってた。
けど実際会うと、何を話せばいいのか分からなくなる。
彼女は俺なんか気づいてなくて、もうすぐ通りすぎてしまいそうだった。
待って。
心の中じゃ思ってるのに、口にはなかなか出せない。
本当に彼女が通りすぎてしまいそうになった瞬間。
俺はやっと声を発した。
「浜口さん」
想い続けている彼女の名を。