ぶきっちょ
しばらく沈黙が続いて、二人の間に気まずさが漂った。
けどしばらくすると、彼女は俺を真っ直ぐ見つめた。
とにかく空気を和ませたくて、俺は少し冗談混じりに口を開くことにした。
「あれ、結構効いたよ」
そう言って大袈裟に頬を擦りながら彼女を見ると、少し慌てた様子。
中学の頃もずっとそうだった。
俺はいつも照れ隠しのせいか、ふざけてばっかりで。
彼女の反応や色んな表情が見たくて、とにかく冗談ばっかり言っていた。
肝心なことは伝えることもしないで。
一瞬、昔のような和やかな雰囲気になる。
出来ることならば、このまま時間が止まればいいのに。
そう思ってしまう程に。
けどそれじゃ、何の意味もない。
何のために千夏ちゃんを傷付けて。
何のために友貴と殴りあってまで喧嘩して。
何のために浜口さんを戸惑わせて。
何のためにこの暗闇の中、彼女を待ち続けたのか。