ぶきっちょ
俺は携帯を取り出し、通話ボタンを押す。
しばらくコールが鳴った後、機械音声で留守電に転送される。
「出ないや」
俺の様子を見ていた彼女はまたうつ向いた。
とりあえずクラスのサッカー部の奴にメールをしてみる。
間もなくして返って来た返事に、俺は驚く。
『トモなら昨日も今日も練習休んだよ』
あの友貴が?
サッカーに対しては、誰よりも熱心だったのに?
もうすぐ県の選抜の選考会じゃなかったか?
俺は混乱しながらも、彼女に伝える。
「今日部活休んだみたい」
「え?」
彼女も驚いたようにまた、俺を見た。
「体調悪いのかな…」
心配そうに、携帯を握り締める。
その様子に、胸がずきんと痛む。
だってどう見たって、彼女はもう友貴しか見えてないようだった。