ぶきっちょ
「とりあえず、今日は帰ろうか」
俺は小さくため息をついてから、彼女を帰るように促す。
「送るよ」
そう言うと、彼女は小さく首を振る。
あぁ、昨日のことがあったし嫌なのかも。
けどもう辺りは暗いし、俺は無理矢理手を引いた。
「何もしないから」
そう言うと、彼女はゆっくりだけど足を踏み出した。
バス停にはもう人はいなくて、俺達二人だけだった。
バスは意外と早く着たので、二人で乗り込む。
俺は空いている席を見つけて彼女を窓際へと座らせた。
携帯のメモリーを呼び出し、メールを作成する。
浜口さんは窓の外の景色をぼんやりと見つめていた。
明らかに友貴のことを考えている様子だった。
自分のものにしたいけど、無理矢理するのは嫌だった。
とりあえず友貴とちゃんと話し合って欲しかった。
友貴と元通りになってしまうのも嫌だけど。
それよりもこんな浜口さんを見ているのは嫌だったんだ。