ぶきっちょ
「俺さ、本当に臆病者で不器用なんだ」
俺はゆっくり彼女に打ち明けた。
「浜口さんなんか俺のこと相手にしてくれるわけないって諦めてた」
彼女は俺の言うことをあまり理解していない様子で、必死に考え込んでいた。
「だから勝手に他の人に逃げてたんだ」
浜口さんに似てる、下田さんという身代わりに。
今考えても、やっぱりあんな馬鹿なことやめとけばよかったと思う。
「だからあの時、彼女がいたんだ」
そう言うと、彼女はまた真っ直ぐ俺を見てきた。
「クリスマスの頃とか?」
聞かれてすごく驚いた。
知ってたんだ、と。
俺は否定できなくて頷くしかできなかった。
ちょうど彼女の降りるバス停について、二人で立ち上がる。
それからは特にどちらも言葉を発することなく、無言で歩き続けた。
友貴から返事がくることはなかった。