ぶきっちょ
「浜口さん!!!!!!」
俺は全速力で走って、校門へと急いだ。
ここ一週間、いくら友貴に会えなくても待ち続けている彼女の元へ。
「と、友貴に……」
息切れして、うまく話せない。
浜口さんは心配そうに俺の顔を覗き込む。
「どうしたの?慌てて…」
俺は一息ついて、彼女の目を真っ直ぐ見て言った。
「今日中に友貴に会わなきゃ、絶対後悔する」
「え?」
いくら友貴に会えなくても、強い目で待ち続けていた瞳が揺れる。
「友貴、明日アメリカに行く」
―あいつ、膝壊してたんだって。
さっきまで、知らなかった。
友貴が怪我してたなんて。
―治療とリハビリ受けるついでに留学するって。
「あいつ、だから避けてんだよ。こうなるの知ってたから」
俺はそう言って、浜口さんにメモを渡す。
「今日は家にいるはずだから」
早く。
引き返せなくなる前に。
彼女は涙を溜めた目のまま、ありがとうと言って走り出した。
「浜口さん!大好きだったよ、ありがとう!!」
俺はそう叫んだ。
何故かすごく、落ち着いた気分だった。