ぶきっちょ

忘れられない過去




「…かり?ゆかり?」


「んー?」


「どしたの?またぼーっとしてる」


静香があたしの前の席に座って言う。


あたしはまだ少しぼーっとしたまま、ふと校庭を見る。


次は隣のクラスが授業のようで、静香の彼氏の慎くんがいる。


慎くんはあたし達に気付くと大きく手を振る。


静香も優しくほほ笑み、手を振り返す。


…と、そんな彼にいきなりボールがぶつかる。


ボールの来た方を見ると、こっちに向かってVサインの黒川くん。


慎くんと同じサッカー部で、いつも仲がいい。


「面白いよね、黒川くんって」


あたしがそう言うと、静香は頷いてあたしに聞く。


「惚れた?」


「…ううん」


あたしはただ首を振った。









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『吉村くんって面白くない?』


最初の頃はただそれだけだったのに。


彼はクラスのムードメーカー。


いつも笑いの中心にいた。

















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