ぶきっちょ
「そっか」
畦地は参った、という風に笑うと向きを変えて立ち去る。
残された女はほっとした様子で伸びをした。
ぐるりと周りを見渡すと、ポケットから何かを取り出して握りしめる。
……指輪?
目を凝らして彼女の手の中を見ると、日光に照らされて銀色の物体が目に入った。
一息つくと、彼女は体育館裏を後にした。
俺と一緒になって様子を伺っていた先輩は、何かを思い出したように手を叩いた。
振り返った俺に、先輩は言う。
「噂の転入生だ!!」
…噂?
俺は思考回路を巡らせて考えるけど、全く見当がつかない。
「二年にめちゃ可愛い子が転入してきたって男子が騒いでた」
友貴は噂に疎いもんね、と笑って付け足しながら。
去っていく彼女の後ろ姿はとても綺麗で。
指輪を握りしめる彼女の横顔は確かに綺麗な顔立ちだった。