ぶきっちょ
それから週に数回、同じような場面に遭遇した。
先輩、後輩、同級生。
色んな奴に呼び出されては同じやりとりを彼女は繰り返した。
そしていつものように、指輪を不安そうに握り絞めてから去っていく。
「すごい人気だね、あの子」
先輩が感心したように言う。
「あ、友貴」
いつものように部室に入ろうと鍵を開けていた俺を、先輩が止める。
「あたし彼氏できたから、今日で最後ね」
先輩は幸せそうに笑いながら言った。
「はいよ」
俺はただそれだけ言うと、先輩を部室に連れ込んだ。
別にショックでもなければ、腹が立ったりもしなかった。
美月先輩との関係がなくなっても、他に代わりはいっぱいいるし。
むしろ先輩のお気に入りだと噂されるために、最近同級生の女が寄り付かなかったから丁度よかった。
最後に先輩を抱きながら、俺の頭の隅には指輪の女がいた。