ぶきっちょ
マナミ
「トモ、部室行こうよ」
そう行って、俺の腕にしがみつくのはマナミ。
名字は知らない。
最近よく昼休みに俺の所へやって来る。
学年じゃ結構有名な美人で、男関係の噂は絶えない。
彼氏が他校にいるって噂を最近耳にしたけど、本人からの誘いだし。
俺がポケットを探って鍵を取り出すと、彼女はそれを取り上げて部室のノブを回した。
「ごめんなさい」
その時聞こえたいつもの声。
いつもと同じようなやり取り。
今日も全く迷うことなく相手を断る。
意思のはっきりした声と、その表情。
「あ、浜口さん」
彼女に気付いたマナミがそう言う。
「すごいもてっぷりだよねー」
感心したようにマナミは言う。
「前の学校に彼氏いるらしいけど……」
マナミがそう言いながら、俺の手を引いて部室に入る。
「勿体無いよね、適当に付き合っちゃえばいいのに」
そう言うと、俺に軽く口付けて来た。
「遠距離じゃ何も、気持ちいいこと出来ないのに」
そう言って微笑むと、また俺に口付けて来た。