ぶきっちょ
普通はこんなことしちゃ駄目だって、ちゃんと分かってはいた。
けれど何だかどうしても自分を止めきれずに、俺は掘り返されて新しい土に近づく。
彼女の使った、土の付いた小さい石を拾う。
ゆっくり、穴を掘るとすぐに目的の物へと達した。
そっとそれを手に取ると、銀色の小さな指輪だった。
すごくシンプルなものだったけど、間違いなく彼女がいつも握り締めていたもの。
ただどうするわけでもなく、その指輪を彼女がしていたように握り締めてみる。
先ほどの彼女の、切なそうな表情が目に浮かぶ。
それと交互に浮かぶのは、いつもの迷いのない真っ直ぐな表情。
俺は自分の首に着けていたチェーンネックレスを外し、そのチェーンだけを手に取る。
飾りはポケットへとしまい、代わりに指輪を通した。
そしてそっと、フェンスに指輪をぶら下げた。