ぶきっちょ



「トモ、ちょっといい?」


一週間くらい経った頃だろうか。


マナミが久しぶりに昼休みにやって来た。


俺が廊下に何人かで輪になって話し込んでいた時だった。


周りを囲んでいた女達は、マナミの声に反応してそっと立ち上がる。


「今じゃなきゃだめ?」


俺はマナミを見ずに尋ね返す。


立ち上がった女達は不安そうに俺を見つめる。


「今がいい。だめ?」


俺が顔を上げないので、マナミが視線を合わすようにしゃがんだ。


俺は仕方なく立ち上がり、女達に笑顔で手を振って歩き出す。


向かうのは、いつもの体育館裏。


マナミは早足の俺に、必死に付いて来る。


いつものような軽いノリが感じられない。


話しかけることも、腕を組んでくることもない。


面倒くさい。


正直そう思った。










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