ぶきっちょ
「面倒くさいって何よ!!」
マナミが小走りで俺に駆け寄り、背中を叩く。
「トモだって、あの子のことばっかり見てるくせに」
そう言いながらも、叩き続けるマナミ。
叩くと言っても全然痛くないんだけど。
「……は?」
振り返ってマナミの腕を掴み、聞き返す。
動揺していないように振る舞ったけど。
一瞬、どきんと心臓が撥ね上がった。
「いつも、浜口さんばっかり見てるじゃん!!!」
涙を拭いながらマナミが答える。
「気付かないと思った?見てれば分かるんだよ?」
彼女の名前がいきなり出て、力の抜けた俺の手からマナミが腕を抜く。
「これでも本気でトモが好きなんだから」
そう言って、涙を堪えるように両手で顔を覆う。
「面倒くさいの一言であたしの気持ちを済ますなら……」
マナミが一度、呼吸を整えてからまた口を開く。
「トモの気持ちはどーなのよ!!!!」