ぶきっちょ
マナミの去った体育館裏で、一人呆然と座り込んだ。
俺が彼女を好き?
冗談じゃない。
あの子は悠斗の初恋の子だぜ?
さっきから繰り返される、答えの出ない問題。
そんな俺の目に入ったのは、あの日彼女が埋めた指輪。
今もフェンスにぶら下がったまま。
「認めるしかねぇのかよ」
俺は一人ポツリと呟いた。
初めて声を聞いた時から気になっていた。
初めて後ろ姿を見たときに目が話せなかった。
指輪を握り締めていた彼女を見て、心臓が暴れた。
頻繁に男に呼び出されている彼女が、気になって仕方なかった。
泣きそうな彼女を見たとき、思わず駆け寄りたくなった。
思わず抱きしめたくなってた。
彼女が大事そうにしていた指輪を、わざわざ掘り返した。
あんな彼女を見たくなかったから。
笑った彼女を見てみたかったから。
「これが、本気か……」
また一人呟いた俺は、そっとフェンスにかかった指輪を手に取った。
そしてゆっくりとそれをポケットへとしまった。