ぶきっちょ
俺は一息つくと、指輪を元通りに埋めた。
全てをなかったことにするために。
彼女の真っ直ぐな声に惹かれた。
彼女の真っ直ぐな瞳に惹かれた。
彼女の真っ直ぐな想いに惹かれた。
あんなにも真っ直ぐな彼女に、歪みまくった俺が似合う訳がない。
そう思ったから。
真っ直ぐに彼女を想う悠斗がお似合いだ。
そう思ったから。
女の取り合いなんかで、悠斗という親友を失いたくない。
そう思ったから。
指輪に通したチェーンだけは、そのまま一緒に埋めた。
ほんの少しだけ、未練があったから。
そして俺は密かに決意した。
もし。
悠斗にいつか浜口さん以外の女ができて。
まだ彼女を俺が想い続けているようなことがあって。
俺が今よりまともな人間になっていたら。
その時こそは想いをぶつけてみようと。