ぶきっちょ
たまに体育館裏が懐かしくなって、顔を出してみることもあった。
悠斗たちと校庭へ向かう前に少しだけ抜けて、そこを通るくらいだけど。
3年に進級する前に2、3回だけ、彼女の姿をそこで見た。
彼氏と別れたと聞いてからも、彼女が他に男を作ることはなかった。
「好きな人がいる」
そう真っ直ぐ、彼女が言っているのを聞いた。
悠斗は悠斗で、それなりに頑張っているようだった。
三年に上がると、偶然俺ら二人と彼女は同じクラスだった。
いつからか俺は彼女を『浜口っちゃん』と呼び、悠斗とともに彼女と話す機会が増えていた。
何かと言えば悠斗は彼女に話しかけて笑い合う。
俺もその輪に交ざり、一緒に笑う。
実際に話してみたら思った以上に話が合ったが、悠斗の存在が俺のストッパーになっていた。
結局卒業まで悠斗と彼女の関係も、俺と彼女の関係も変わることなんてなかった。