ぶきっちょ
そんなある日だった。
練習中にいつものようにパスがうまく出せず、俺はイライラしていた。
気になるのは、左膝の違和感。
少しだけ、痛む気がする。
調子が悪いだけ。
そう自分に言い聞かせて俺は練習を続けた。
選考会直前だというのに、練習を怠るわけにはいかないから。
「山下、抜けろ」
そう監督が言う。
「代わりに畑中入れ」
そう続けて言って、代わりに3年の畑中さんが入る。
畑中さんは俺が入学するまで今の俺のポジションに入っていた人。
つまり、俺が調子が悪ければすぐさま彼にポジションを取られる。
「他の一年に混ざってランニングして来い」
俺は仕方なくランニングに混ざった。
よりはっきりとしてくる左膝の違和感を気にしながら。