ぶきっちょ
「もうやらないの?」
「たぶんね…」
小学校も中学校も、別に強豪校じゃなかった。
高校で続けても、きっとレギュラーにはなれない。
「じゃぁさ」
黙り込むあたしに、黒川くんが口を開く。
「サッカー部のマネージャーやらない?」
「…へ?」
突然の勧誘にあたしは戸惑う。
「だ〜か〜らぁ〜!!マネージャーやらねぇ?」
黒川くんは笑顔で言う。
やっぱりすごく綺麗な顔立ち。
それをくしゃっと崩して言う。
「そしたら俺、すんげぇ嬉しいから」
「…え?」
意味が解らずあたしは間抜けに聞き返す。
ちょうど水飛沫を上げながら、バスが到着する。
茫然とするあたしの背中を押して、彼はあたしを乗せる。
振り返るあたしに満面の笑みを浮かべて。
「俺、由香里ちゃんが好きだから」