ぶきっちょ
しかし一瞬で我に返り、未だに固まっている悠斗よりも先に声をかける。
「浜口っちゃんじゃん!!久しぶり!!」
至って普通に見えるように。
俺の気持ちがバレないように。
悠斗の戸惑いが千夏ちゃんにバレないように。
とにかく色々なことを考えて、明るく場が盛り上がるように色々な話題を振った。
悠斗もいつの間にかいつもの調子に戻っていて、千夏ちゃんの隣で話に加わっていた。
やがてバスが来て、並んで二人はバスに乗り込む。
千夏ちゃんが悠斗の腕に捕まって、仲良さげに。
千夏ちゃんの友達二人は電車の時間に合わせて駅へと向かう。
残されたのは俺と浜口さんの二人っきり。
さっきまでは何とか普通に話せていたのに、何故か再び戸惑う。
それは彼女も同じようで、少し居心地悪そうな感じ。
話しかけてもどこか上の空。
「びっくりしすぎだって!!」
ふざけるように、この時の俺は彼女に笑いかけた。
彼女の気持ちなんて知らずに。