ぶきっちょ



「ありがとね、わざわざ」


彼女を家まで送り届けると、彼女はまたお礼を言った。


変わってないな。


さっきの彼女の言葉をそのまま、彼女自身に感じた。


…俺の気持ちにも。


「…あのさ」


気付いたら、彼女に向かってそう言ってて。


「ん?」


彼女は変わらぬ真っ直ぐな瞳を俺に向けて、俺の次の言葉を待っていた。


俺は意を決して、気になっていたことを尋ねた。


「今彼氏いんの?」


「いないけど?」


彼女の即答に、心の底から安心した。


「じゃ、今度デートしよ?今日のお礼」


冗談のようにそう言ったけど、これは本気。


「いいよ」


彼女は柔らかく微笑んでそう答えた。


彼女が冗談だと受けていても、それでも嬉しかった。


「じゃ、また今度」


俺も笑顔でそう言って、彼女に手を振って背を向けた。


そして家ではなく、ある場所へと向かった。













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