ぶきっちょ
バスのアナウンスが終点を告げる。
着いたのは、中学時代の遠足でも来た水族館。
本当は街で降りて今話題の映画見たり、飯食ったり。
それとなく普通のデートを企ててたけど。
泣きつかれたのか、静かに寝息をたてる彼女を起こすことはできなかった。
バスがスピードを緩め始めた頃、彼女が目を覚まして辺りを見渡す。
寝起きだからか、泣いたせいか。
彼女の瞳は少し赤みを帯びて潤んでいて。
どうゆう風に接すればいいか解らなくなった俺は、ポケットの小銭を漁る。
二人分の料金を運賃箱に投入してバスを降りると、水族館の近くの海から潮の香りがした。
やっと少しいつも通りに戻った彼女が、俺に続いてバスを降りる。
中学時代の遠足を話題に出すと、少し無理をして笑う彼女。
そんな表情の彼女は見たことがなくて。
初めて見る彼女の違った顔に嬉しさを感じながらも、
そんな風に彼女を変えてしまう正体不明の奴にみっともない嫉妬心が生まれる。