ぶきっちょ
「はっ…今さら」
呆れたように言った俺に、母親が続けて言う。
「トモ」
いつもにない真剣な顔つきに、俺は驚いて見つめ返す。
「パパはあたしたちのこと捨てたりなんかしてないよ」
始めて聞かされる父親と母親の話に、戸惑いながら箸を置く。
「パパとあたしの夢がね、一緒にいると叶わないものだったの」
母親は、そこまで言うと俯いた。
あたしが悪いのかな、なんて呟きながら。
「どうゆうこと?」
そんな母親を見つめながら、ゆっくりと聞き返す。
「トモももう大人になるんだし、いつかは話そうと思ってたんだけどね」
母親がもう一度顔をあげて、俺を真っ直ぐに見つめ直した。
そしてゆっくり、父親について語り出す。