ぶきっちょ
「おはよ」
学校に着いたのは、ちょうど一限目が終わったところだった。
休み時間で少しざわつく教室に入り、自分の席に向かう。
階段を登ったせいか少し疼く右膝を前に投げ出して、席に着く。
「どしたの?」
俺が登校してきたことに気付いた悠斗が、前の席に座りながら尋ねてくる。
「寝坊ー」
「珍しいな」
そうか?と大袈裟に伸びをしながらそう答えた俺に、悠斗は特に追求しなかった。
別に隠さなきゃいけないことではないけど、何故か言えなかった。
自分自身、認めたくなかったから。
病院での医師の気難しい顔が頭に浮かんで、必死にもみ消した。
何で今なんだよ。
どうにもならない思いに悶々としていると、ポケットの携帯が震える。
『学校来てないのー?千夏から聞いた』
開いたメールは由香里からで。
俺は今来たことと理由は寝坊だとゆうことを伝えた。
ふと悠斗と目があって、何となく後ろめたい気持ちになる。
バチでも当たったかな、なんて思わず笑えた。