ぶきっちょ
「友貴の夢は何だ?」
全てを話し終えた俺に、優しく微笑みながら父親が問い掛けた。
俺の夢…。
言われてみれば、改めて自分の夢なんてものを考えたことはなくて。
「やっぱりサッカーで飯食いたいか?」
何も答えない俺に、父親がゆっくり問い掛ける。
「できればプロになりたいとは思ってるよ」
サッカー以外に打ち込んでるものなんかないし。
プロとまではいかなくても、大学の推薦くらうはこのままなら取れそうなんだ。
こんなところで躓いてられない。
改めて、自分にとってのサッカーという存在を認識する。
「友貴」
真剣な眼差しを俺に送りながら、父親が俺の名前を呼ぶ。
俺もその視線に答えるように、真っ直ぐに見つめ直す。
「一緒にアメリカに行くか?」
思いも寄らない提案に、一瞬にして目が丸くなる。
「アメリカなら手術できる。練習できない間、療養に専念できる」
父親の提案は突拍子のないものだったけど、的を射た提案でもあった。
「なんて、単に俺が寂しいってのもあるけどな」
父親が顔をくしゃっとして笑って誤魔化したけど、俺の頭には先程の提案がすっかり植え込まれた。