ぶきっちょ



「今日も寝坊ー?」


教室に着いた俺に真っ先に悠斗が声を掛ける。


「まぁ、そんなとこ」


俺はただそう言って誤魔化すように席に着く。


「どしたの?不眠症?」


悠斗が心配そうに俺の顔を覗き込む。


「さぁ?何かだるくて」


俺はそう言って次の授業、数学の教科書を机に出す。


嘘を嘘で塗り固めて、俺は何をそんなに隠さなければいけないんだろうか。


嫌になるくらいな状況を、自分で作り上げていっている。


けど、俺は膝の致命的な故障を知られたくなかった。


弱さを見せたくなかった。


弱さを見せるのがカッコ悪いと思ってる時点で、何だかカッコ悪い気がしてきたけど。


隠してしまう一番の理由は、やっぱり自分自身まだ認めたくないからだと思う。


それこそカッコ悪いか。
















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