ぶきっちょ
『誰か』の正体
担任に留学のことを前向きに考えていることを伝え、父親へとメールを作成する。
近々会って、向こうでの生活について話し合うつもりだった。
「友貴」
携帯をいじりながら職員室から戻って来た俺に近付いて来る悠斗。
「どした?」
平然を装って悠斗を見ると、いつになく真剣な表情を俺に向ける。
どきん、と心臓が跳ねる。
もしかして、留学の話が伝わったのだろうか。
担任にはまだ内密にしてもらうように頼んだのに。
「…何?俺ちょっと忙しいんだけど」
話を切り出される前に、そう言って逃げを試みる。
メールはもう送信したけど、携帯をいじる振りをして悠斗から視線を反らす。
別に隠すべきことじゃないし、いずれは話そうとは思ってる。
けど。
由香里には自分から話したくて。
悠斗と千夏ちゃんから、由香里に話が伝わるのを警戒していた。
「わりぃ」
謝罪の言葉が聞こえ、再び悠斗へと視線を戻す。
「また今度でいい?」
罪悪感に胸が傷んだけど、とりあえず悠斗を放置して席に着く。