ぶきっちょ



その日の部活はやっぱり不調で。


結局途中でレギュラー練習を外された俺は、他の一年に混ざって基礎練をこなした。


改めて今の自分の身体じゃ、思い通りのプレーはできないことを思い知らされた。


けど、何だか気持ちは軽くなっていて。


父親のおかげかな、なんてぼんやりと思った。


練習後には監督の元へと向かい、昨日医師に告げられた膝の状態を伝えた。


そして手術を考えていて、療養も兼ねて留学を考えていることも。


監督は残念そうな表情をしたものの、来年待っていると言ってくれた。


最後に、とりあえず正式に留学が決まるまで部員には黙っていてもらえるように頼む。


一人遅れて着替えや帰り支度を整えた俺は、由香里の元へと向かった。


由香里に伝えるのはやっぱり一番緊張して。


嫌な不安ばかりが頭をよぎって、それを必死に打ち消した。


けどやっぱり俺は由香里もサッカーも失いたくなくて。


気持ちを落ち着けるように立ち止まって深く息を吐いた。


ふと視線をいつもの待ち合わせ場所に向ける。


しかし目に入ったのは少し難しい顔をした由香里が、足早に待ち合わせ場所を通りすぎて公園へと向かう場面だった。

















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