ぶきっちょ
恐る恐る尋ねた俺に、由香里が首を縦に振った。
つまり。
由香里の心に住み着いていた『誰か』は、紛れもなく悠斗だったということ。
涙をただ流し続ける彼女を見て、俺も泣きたくなった。
最近じゃ彼女もだいぶ俺に対して打ち解けてくれていて。
もう『誰か』なんて過去の存在になったんだ。
俺のこと、少しは好きになってくれたんじゃないかな。
なんて思って舞い上がってた自分が馬鹿みたいで。
留学の話なんてできなかった。
留学なんてしたら、間違いなく悠斗に由香里を盗られる。
いや、違うか。
俺が悠斗から由香里を盗ってしまっているのか。