ぶきっちょ



「ただいまぁ」


いつも通りに家に帰り着く。


ふと目に入ったのは見慣れた奈緒の革靴の隣の、見慣れないごついスニーカー。


もしかして…。


ある程度の予想をしてリビングに向かったあたしに奈緒が声をかける。


「おかえり〜。これ、彼氏の宗一郎くん」


奈緒の隣でぺこりと頭を下げる見覚えのある子。


襟元の学年章は、二年生を示す緑色。


「二年生?バド部?」


あたしが聞くと彼は頷き、口を開く。


「はい」


やっぱり。


バレー部とバド部は練習場所が隣。


道理で見覚えがあるはずだ。


「浜口先輩って前、吉村さんと付き合ってました?」


「へ?」


予想もしていない質問にあたしは間抜けに返す。


吉村くんとあたしが?


「すみません、変なこと聞いて」


彼は申し訳なさそうに頭を下げる。


「去年のクリスマスに一緒に歩いてる後ろ姿見ちゃって……」


「ううん、いいよ。けどそれ人違いだよ」


あたしはそういって二階に上がる。
















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