ぶきっちょ



去年のクリスマス。


その日は丁度終業式の日。


あたしは普通に帰宅して、友達と塾に向かった。


吉村くんと一緒にいるなんてありえない。


だって。


その数日前にあたしは彼の口から『ありえねぇ』って言葉を聞いた。


すごく落ち込んで。


少しは彼に近い存在だと思ってたのに。


それはただ、勝手に浮かれてただけだと沈んで。


軽く彼を避けてた時期。


彼女いたんだ。


「そりゃありえないな」


あたしと付き合うなんて。


あたしはそう呟きながらベッドに倒れこんだ。


ポケットで紙が擦れる音がする。


さっきバス停で知り合った、バレー部の良美ちゃんのアドレスが書かれた紙。


『バレー部はね、バド部とバスケ部の間のコートで練習してるよ』


良美ちゃんがそう言ってた。


バド部の隣か。


中学のときは隣でいつも吉村くんが騒いでいて。


休憩中にはふざけながら声を掛けてくれた。


あたしがスパイクを決めると、大声で『ナイス!!』って叫んでくれたっけ。


「だめだ……忘れられるわけないよ」


あたしは小さく呟いた。










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