ぶきっちょ
「由香里ちゃん」
しばらく俯いていたあたしは、突然名前を呼ばれて顔を上げる。
「……黒川くん」
そこには黒川くんが立っていて。
いつもの明るい彼とは全く違う、悲しそうな表情だった。
「昨日のことだけど、やっぱりダメかな?」
昨日。
あたしは結局電話できちんと断る勇気がなくて。
彼からの電話を待たずにメールを送って、携帯の電源を切った。
『ごめんなさい。色々考えたけどいい返事を返せそうにないので、今日は寝ます』
ただそれだけメールした。
学校で会ったらどうしよう。
そう思いながらも、会わずに一日済んだと思っていたあたしは、すごく動揺していた。
何も言えずに、ただ俯いて、時間だけが過ぎていく。