ぶきっちょ
「覚えてる?中学の遠足で来たの」
建物を見て、うーんと伸びをしながら彼は言う。
自然と離された手が何だかとても淋しく感じる。
「中入る?外ぶらぶらする?…それとも帰る?」
少し躊躇ったように聞く彼。
「ごめんね」
その優しさがとても胸に染みて、あたしはまた涙を流す。
さっきあれだけ泣いて、全部涙は出てしまったと思っていたのに。
きっと山下くんが優しすぎるから、気が弛むんだろう。
「いいって…謝んな」
優しく微笑んで、あたしの頬の涙を拭う。
その優しい手に触れられて、さらに涙は溢れるばかりだった。