ぶきっちょ
************************
『ナイスアタック!!!』
練習中に聞こえる大好きな彼の声。
バド部が休憩中の間、吉村君は大抵バレー部の様子を見ていた。
出来るだけ意識しないように、頑張って練習したっけ。
あたしがスパイクを決めると、間を仕切るネット越しにいつも声を掛けてくれた。
いつも笑顔で。
************************
「ナイス由香里!!」
後輩にまざってスパイク練習をしていた時。
いつの間に体育館に来たのか、山下君の声がした。
入口に立って拍手と共にあたしに声を掛けてきた。
あたしが手を振ると、山下君は笑顔で手を振り返す。
「あー、山下先輩だ」
綺麗な顔立ちと、サッカーが上手いことで有名だった山下くん。
そんな彼を見て、後輩たちが少しざわつく。