ぶきっちょ



着いたのは通学路を少し入った所にある小さな公園。


隣には小さい教会がある。


ベンチに腰掛けた山下君がゆっくり口を開く。


「聞いたことある?」


…何を?


そう口に出す前に山下くんが続ける。


「この公園のジンクス」


「ジンクス?」


あたしが聞き返すと、山下くんは頷く。


「そ。坂元中学限定ジンクス」


そう言って、空を見上げる。


「恋人と学校からの帰りにこの公園に寄って、あることをするとずっと一緒にいれるってやつ」


山下くんがあたしの方を見て、微笑む。


「あることって…?」


そう言って山下くんを見つめ返した。


ふと。


山下くんの顔が至近距離に近づく。


一瞬だけど、触れる唇。


山下くんとキスをするのは初めてじゃないけど。


不意打ちに少し驚くあたしに、山下くんは口を開く。


「このベンチでキスすること」


少し照れたように顔を反らす。


そう言った彼の耳が少し赤い気がした。


……山下くんとずっと一緒にいたいな。


心の底からそう思えた気がした。
















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