ぶきっちょ
思いがけない波乱
「あ、由香里待って!!」
教室を出ようとしたあたしに、明美が声を掛ける。
手には小さな紙袋。
「今から山下くんと会うんでしょ?」
もう片方の手には週番日誌。
「千夏もまだ西高辺りにいるはずだから渡して」
千夏は今日、吉村君との二ヶ月記念日だと朝から嬉しそうに話していた。
「記念日のプレゼント、机の横に掛けっぱなしだったの」
そう言って紙袋を差し出す。
「まださっき出たばっかりだし追い付けると思うからさ」
そう言って微笑む明美。
あたしはまだ週番の仕事あるから、と明美はだるそうに付け足す。
あたしはそれを受け取り、頷く。
「由香里ももうすぐ二ヶ月だねー」
明美はそう行って窓の外を見る。
「あたしにも幸せ来ないかな?」
冗談のように、でもたぶん本気。
あたしは微笑んで明美に手を振って教室を後にした。