ぶきっちょ
いつも笑顔がたえない千夏。
そんな千夏から想像できないくらい、その声は震えていた。
声が聞こえてくるのは、西高と桜高の間の小さな公園。
暗いけど、外灯に照らされているのは確かに二人の影。
あたしはゆっくりそこへ向かう。
近づく度に声がはっきり聞こえてくる。
「ごめん、けど……」
吉村君の影が、躊躇いがちに千夏の影に近づく。
千夏の影は、その場にしゃがむ。
両耳を押さえているようだ。
何があったの?
せっかくの二ヶ月記念日でしょ?
心配になって、あたしの歩く速度は上がる。
「嫌だってば!!聞きたくないの!!!!」
千夏がまた大声で拒絶する。
「聞けってば!!!」
千夏に負けない位の大声。
暗闇だけど、だいぶ近付いたあたしの目に写る千夏の涙。
呆然と、吉村君を見つめていた。
「今更って思うだろうし、自分でも呆れるくらい自己中だけど……」
吉村君がゆっくり、千夏に合わせてしゃがみこむ。
「けどやっぱり俺は……」
躊躇うようにゆっくり吉村君は話す。
「浜口さんが好きだ」