ぶきっちょ
「嘘なんかじゃねぇよ!!」
そう言って、腕を掴まれる。
あたしは振り返らずに言う。
「信じられるわけないじゃん」
吉村くんの手の力が弱まる。
あたしはその隙を狙って手をふりほどく。
「だって、吉村くんはあたしを振ったんだよ?」
たった二言で。
無理って。
思い出すとやっぱり涙が溢れそうになる。
あたしは必死に走って、出口に向かった。
立ち止まったら何かが壊れてしまう気がして。
千夏のことが気になったけど、早くこの場から立ち去りたかった。