ぶきっちょ


『ごめん、今日一緒に帰れねぇや』


昼休み。


山下くんからメールが来る。


『分かった☆あたし今日バレー部見学行って来るね』


そう返して携帯を閉じる。


一緒に帰れないってのは付き合い始めてから初めてだった。


理由……何か聞きにくいな。


昨日の今日だから何だか少し不安だけど。


今日はいつもくだらない話の盛り上がるお弁当も、何だか美味しく感じない。


千夏が元気がないから。


「あのさ」


小さく、けどしっかり千夏が皆に声をかける。


明美も静香も、千夏を心配そうに見つめる。


「悠斗と別れちゃった」


涙目で、千夏が言う。


「本当はね、元々二ヶ月試しにって約束だったんだ」


千夏が無理したような笑顔で言う。


「いい感じだと思ってたんだけどな」


千夏の目尻から、堪えきれなくなった涙が溢れた。


「由香里もごめんね。全然気付かなくて」


あたしはゆっくり首を振った。


謝らなきゃいけないのは、あたしの方なのに。












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